祝島の補償金問題を考える

詳しい報告が遅くなってしまいました。

14日、山口県漁協が招集した祝島の漁師さんによる漁業補償金の会合当日の様子をアップしました。

 

前日、祝島の正組合員の漁師28名(過半数)は、補償金の議案を「否決」としていて、結果は決まっていたのですが、県漁協に対して不信感を抱いている漁師さんや島の人たちは心配して船に乗って会場前に集まりました。各地からも原発問題を自分事として駆けつけた人たちがいました。

 

会合は非公開で、組合員以外は立ち入り禁止とされました。

県漁協は、新しく准組合員となった島民4名にも「関係がない」と立ち入りを拒みました。その4名は准組合員となる時に、補償金の配分を受けないこと等を条件とした誓約書を書かされており、県漁協はそれを理由にしました。しかし、組合への加入を条件を付けて制限することは、水産業協同組合法に違反していることから、県漁協は4名を会場に入れることを認めざるを得ませんでした。


前日に、祝島の漁師が書面で「否決」しようとした時に、書面の受け取りを拒んだように、県漁協は補償金の受け取りを拒む組合員に対しては不利な条件を課し続けています。

 

会合の結果は、補償金の配分案について、賛成24・反対28(議長除く)で否決となりました。

 

「海を売ることはできない」と頑張ってくれている人たちに感謝の念を抱くと同時に、原発に翻弄されてきた人たちの苦しみを思いました。

原発に象徴される、誰かの犠牲の上に成り立つ社会から卒業することは、僕たち一人一人に与えられた課題だと思います。

 

今回もルール(規則)を巡って騒動がありましたが、そもそもの前提問題となる議論も続けられています。

それは、総会(の部会)の可決条件は過半数か3分の2以上かということや、そもそも漁協の総会(の部会)決議で、「漁業権の侵害(=補償金の受け取り)」という内容を決めることができるのか、という根本的な問題です。

 

補償金を受け取らせたい県漁協は、可決条件を、低いハードルの「過半数」の同意だと言います。しかし、県漁協の定款(規則)によるとすれば、過半数という根拠はなく、「3分の2以上」の同意が必要だと読めます(※詳しくは下の【補足】に書きます)。

 

定款によるとすればと書いたのは、そもそも定款に、埋め立てや原発によって漁業権が侵害される場合については書かれていないのではないかと思えるからです。漁業協同組合は、組合員が協同することで漁業の生産能率を上げることを目的として作られていることから、漁師が自らの利益のために主体的に行う事柄以外は書かれていないのは当然と言えるのかもしれません。

 

漁協の総会決議(過半数や3分の2以上など)で、漁業権の侵害を決めることが、そもそもできないのではないでしょうか。

 

漁業権とは漁業を営む権利なので、漁業権を持つのは漁協ではなく漁師一人一人だと思えます。漁業権は財産権であり、憲法で保障されています。それを侵害する場合、漁業権を持つ者への補償や同意が必要です。すなわち漁師全員の同意が必要であると思われます。(参考 http://bit.ly/1Dvzsdl)(補償金を受け取ると同意したことになるので、漁協の過半数の同意で決定したとして、全員に補償金を受け取らせようとしているようにも思えます。)

 

 

会合を終え、船で帰る祝島の人たちを見送り、僕も帰路に就きました。

和歌山の家でこれを書いていますが、学びながらの発信で間違っていることもあるかもしれません。皆さん、調べてみてください。

の中の多くのことが法律や規則で動いているので、それを学ぶことの大切さを改めて感じました。一人一人の生きる権利を保障する国の最高法規である憲法も、死文化させず生きたものにできるかどうかは僕たち一人一人の関わり次第なのだと思います。

 

映画の最終完成に向けて、手直しに励みたいと思います。応援して頂いている皆さん、ありがとうございます。

 

 

 

【補足】

県漁協の定款には、総会の部会で議題となる事項として、以下の3つが挙げられています。可決条件は、①②は3分の2以上、③は過半数の同意となっています。

 

① 特定区画漁業権若しくは共同漁業権又はこれらに関する物件の設定、得喪又は変更

② 漁業権行使規則の制定、変更及び廃止

③ 特定区画漁業権若しくは共同漁業権又はこれらに関する物件に関する不服申立て、訴訟の提起又は和解

 

この中で、埋め立てや原発による漁業権の侵害を当てるとすれば、①になると思いますが、県漁協はこれに当たらないと言います。

(祝島の漁業権(共同漁業権)への侵害は、埋め立てによる消滅ではなく、原発の温排水による影響だから、「喪失」ではないと言います。では、「変更」かというとそれは言いません。)

①に当たらないことは過半数で良い根拠にならず、そうすると、書かれていない事柄を議題にすることができるのかという問題になると思います。


 

 

祝福(いのり)の海」

 

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