大飯原発の再稼働の2日前、「再稼働反対」を訴えるために、東京の総理官邸前には数万~十数万人と言われる市民が、そして再稼働の前日から当日、大飯原発の入口には自らが壁となる数百人の市民がいました。
国民の声を聞くことなく、野田総理は「私の責任で」「国民の生活を守るために」再稼働をすると宣言しました。福島の人たちを始め、全国の人たちを被曝から守らず、誰も責任を取らない現状を見るに、国民とは原子力村の村民を指していると思わざるを得ません。
人の壁の中には若者が多く、子連れのお母さんの姿もありました。子どもを産み育てる世代にとってはとりわけ他人事ではありません。「再稼働反対」というコールの間に聞かれる「いのちを守ろう」「未来を拓け」「みんなで考えよう」という言葉こそが彼らの想いであり、原動力と言えるでしょう。参加する人は時間が経つにつれ増えていきました。
市民は入口の前後で警察の機動隊と対峙しました。機動隊は入口に進もうとし、市民がそれを防ぐ格好でした。何度かもみ合いになる中、警察官が市民を蹴るのを目撃しました。警察は市民の数が増えないように入口前方でバリケードを張っていたのですが、そこを通ろうとした男性を数人で取り囲み、中で一人の警察官が数回に渡って男性を蹴っていました。抵抗すれば、公務執行妨害として逮捕しようとしていたと思われます。男性が無抵抗だったのでそれは免れました。警察は国家権力であり、市民を守る存在ではないのだと改めて思いました。
ほとんどの警察官は命令で動き、仕事としてやっているので敵対すべきではないと思いますが。戦争や原発などを生み出す“しくみ”に問題があると思います。
「再稼働反対」の音楽と掛け声は夜を徹して続きました。翌日、全国から応援に来た市民が人の壁に加わりました。雨が強くなっても声は途切れませんでした。夕方、僕は山口に向かうため、後ろ髪を引かれながら現場を後にしました。その後、機動隊は入口前方で座り込んでいる市民を引っ張り強制排除したそうです。
そして、21時頃、予定通り再稼働が行われました。
市民は深夜まで抗議を続けた後、自分たちの役割を終えたとゴミを片付けて自主的に退散したそうです。逮捕者は出なかったと思います。
今回の光景は、福島原発事故の約3週間前、上関原発の現場で見た光景に重なりました。原発には民主的なプロセスが欠けています。
山口県知事が中国電力に出していた海の埋め立て免許が10月に切れます。
それを受け、7月2日、中国電力は祝島や島外の人たち(自分も)を訴えていた陸上の仮処分(予定地海岸での妨害禁止)を取り下げることを決定しました(祝島島民の会ブログに報告があります)。海の仮処分にも影響してくると思います。
反対する人たちを強制排除し、訴えながら進めるやり方はもう終わりにしてほしい。
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映画づくりを応援してくださる方々に感謝します。祝島と福島と海に生きる人たちを追う
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